流行りの分割キーボード Helix を作った
Helix はいいぞ。
最近自作キーボードという文化が急激に世間に広まってきているようで、いろいろなところでキーボードを自作した人、キーボード自作本を購入する人を見かけるようになりました。
そんな今熱い自作キーボード界でも特にアツいのが "Helix" です。
今日はそんな Helix をGB(Group Buy, 共同購入)し、実際に組み立ててみました。
Helix の公式ウェブページ(?)はこちら。
もくじ
Helix とは
Helix は「ロープロファイルスイッチ対応の自作キーボード」です。 遊舎工房さんがGBを企画、キットの製造販売を行っています。
以前私が組み立て、当ブログでも紹介した "Let's Split" (以下レツプリ)をベースにした格子配列分割キーボードです。 レツプリの記事はこちら。
特徴は以下の通り。公式GBページより引用。
- 格子配列
- 左右分割型(片手デバイスも可)
- Cherry MX互換、ALPS/Matias、Kailhロープロファイルスイッチに対応
- 5行か4行を選択可
- RGBバックライト対応 *1
- Underglow対応 *1
- OLEDモジュール対応
- 左右を繋ぐケーブルは3極のオーディオケーブルを使用(4極でも問題ありません)
- ファームウェアはQMKを使用
- 薄さを追求
- オープンソース(PCBデータは後日公開予定)
*1 RGBバックライトとUnderglowは同時に使用できません。
トノコト。
ざっくりまとめると「薄くてかっこいい格子配列の分割キーボード」です。
入手方法
昨年末頃に GB の第一弾がありましたが、現在のところ再販はまだ行われていないっぽい…?です。近いうちにGB第二弾がありそうな気はします。
遊舎工房さん、ないんさんをフォローして再販のお知らせを待ちましょう。
必要なもの
パーツ類
上述のキットはキーボードを組み立てるのに必要なものが全て揃って… いません 。
キットに含まれているものは
です。
- キースイッチ
- キーキャップ
はキットには含まれていません。(Helixに適したものを同時購入できる…はず?ですが)
ので、上述のキットの他に好きなキースイッチ、キーキャップを自分で手配する必要があります。
スイッチやキャップは個人で好みが大きく別れるものでもあるので、頑張って自分好みのスイッチとキャップを探して購入しましょう。
国内での入手はまだまだむずかしいので、基本的には海外通販に頼ることになります。あるいは自作キーボード界隈の人に聞いて譲ってもらう、なども。
ちなみに今回私は以下のスイッチ、キーキャップを用意しました。
なお、Helix は ロープロファイル対応 が大きな特徴、ウリなので、特にこだわりがなければロープロファイルのスイッチとキーキャップを購入するのがいいかもしれません。
キースイッチ、キャップの入手性、バリエーションなどが豊富さではロープロファイルでない方が圧倒的に有利なため、カスタマイズが好きな方はロープロファイルにしないほうがいいかもしれません。 上述のスイッチ、キャップはロープロファイルではない通常の、いわゆる Cherry MX 互換のものです。
工具類
ざっくり以下のものが必要です。オススメの工具も一緒に載せておきます。
- はんだごて
- 出版社/メーカー: 白光
- 発売日: 2012/01/18
- メディア: Tools & Hardware
- クリック: 1回
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- コテ台
白光(HAKKO) セラミックヒーターはんだこて専用こて台 クリーニングスポンジ付き FH300-81
- 出版社/メーカー: 白光
- メディア: Tools & Hardware
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- はんだ
- 出版社/メーカー: 太洋電機産業
- メディア: Tools & Hardware
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- ニッパ、ラジオペンチ、ピンセット、精密ドライバなどの工具類
- 出版社/メーカー: エンジニア(Engineer)
- メディア: Tools & Hardware
- クリック: 46回
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ニッパとピンセット、精密プラスドライバがあればどうにかなる気がします。
基本的に工具類は好きなものを使えばいいのですが、バックライトLEDを付ける人だけは話が別で、
- 温度調整が可能なはんだごて
- 融点が低い(目安200℃以下)はんだ
- ≒ 有鉛はんだ
が必要です。一定以上の温度になるとLEDが死にます。結構シビア。
組み立てる
必要なものが揃ったら組み立てていきます。
わかりやすいビルドマニュアルが github にあるので、それを参考に組み立てれば特に迷うことはないはず。
以後、基本的に公式ビルドマニュアルに従って組んでいけば大丈夫です。
…大丈夫ですが、いくつか間違えたりしたところがあったので、写真を紹介しながらポイントを確認していきたいと思います。
4行か5行か選ぶ
Helix はキーボードの行数を4行もしくは5行から選ぶことができます。デフォルトは5行。
4行にするとベースになったレツプリに近くなり、
- 最上段の数字キーがなくなる
- 数字の入力はレイヤーキーと呼ばれる特殊キーとの同時押しで入力するのが基本になる
- 左手側の右下、右手側の右下にある Pro Micro 下のキーが2個から1個に減る
などが変わります。コンパクトさを重視する人、レツプリを使っていて使用感をあまり変えたくない人などは4行もありですが、 基本的には5行のほうが使いやすいと思われます。多分。お好みでどうぞ。
なお、組み上げてからの変更は基本的に出来ないのでご注意ください。
左右(裏表)を決める
Helix の基板は左右ともに同じものですが、裏表が逆になります。
Pro Micro の設置場所にあたる部分(右上/左上隅のなんか細かいスルーホールがいっぱい開いてるところ)が、
- 左手側は右上に
- 右手側は左上に
なるようにした時の面が 表 になります。これを基準に作業をするので覚えておきましょう。
これを画像で表現すると ビルドマニュアルの一番最初の画像 になります。 画像の2枚の基板の状態がそれぞれのオモテ面です。
OLED用のジャンパ(OLED付ける人だけ)
ビルドマニュアルの通りなので省略。左右それぞれオモテ面をジャンパします。 OLED を付けない人はスキップ。
ダイオードとLED
ダイオード、LEDはウラ面に実装します。これもビルドマニュアルの通り で特に迷わないと思います。
表面実装部品を使う場合は少しコツが居ると思われるので、以下にやってみて得られた知見、TIPSなどを書いておきます。参考までに。
表面実装ダイオードの実装
※あくまで個人的にやりやすかった方法の例です。もっと効率の良い、あるいはやりやすいやり方があるかもしれないので各自やりやすい方法でどうぞ。
表面実装ダイオードはかなり小さいので、何も考えずにリード部品と同じノリではんだ付けしようとすると、軽くハンダゴテで触っただけで飛んでいくダイオードに弄ばれます。
以下の手順で実装すると多少楽に実装できるかもしれません。
- 片側のランドに予備ハンダを適量盛る。
- ピンセットでダイオードをつまみ、ランドに盛った予備ハンダを溶かしながらダイオードの端子を挿し込む。
- このとき、ダイオードが設置位置の真ん中に来るようにし、どちらか片方のランドに偏ったりしないようにすると後が楽。
- はんだごてをランドから離してハンダを固める。
- 同様の手順を一列分など、ある程度まとまった数はんだ付けする。
- もう片側をはんだ付けする。
- 先に予備ハンダで固定した方はできれば再度ちゃんとはんだ付けし直す。
後から調べたらこの手順で実装するので合ってたようです。以下のサイトなども参考にどうぞ。
バックライトLEDの実装(バックライトLED付ける人だけ)
基本的にはビルドマニュアルの通りでいいのですが、実装難度が割と高かったのでいくつか TIPS を。
温度調節について
HAKKO FX600 を使っている人向け。
ビルドマニュアルで 約220℃ での実装が推薦されているので、基本的にはそれに従って作業します。
が、もう少し高めの温度で作業しても(手早くやれば)多分大丈夫です。具体的に言うと「270℃よりひとつ下のダイヤル」で良さそう。
ハンダが多少融けやすくなって作業しやすくなります。が、LEDが壊れるリスクは確実に上がっているのでご注意ください。この温度設定でLEDが死んでも私は一切の責任を負いません。
LEDが穴に深くハマりすぎる場合
微妙にLEDのサイズと穴のサイズが合っていないのか、相当頑張らないとLEDと基板がきれいに水平になる嵌り方をしてくれませんでした。個体差があるかもしれませんが。
どうにも固定がうまくいかないので、LEDを入れる穴の中に ハンダ吸い取り線の切れ端をちょうどいいサイズに加工したもの を治具代わりに差し込みました。厚みがちょうどよかったので。
ハンダ吸い取り線1枚じゃ足りない場合は2枚入れてもいいと思います。気持ち浮いてしまって水平に取り付けられないことが割とありますが、嵌りすぎよりははんだ付けしやすいはず。
多少斜めに実装されるのはそこまで問題にならないので、完璧に水平で実装したいというポリシーをお持ちでない限りは多少の斜めは許容したほうが幸せになれます。
(参考写真を撮った気がしたのですが見つかりませんでした)
TRRSジャックとリセットスイッチ
ここから基本的に「オモテ面にパーツを設置 => ウラ面ではんだ付け」、の流れになります。
ジャック、スイッチは特に難しいことはないので省略。
Pro Micro
スプリングピンヘッダは ビルドマニュアルの通り に取り付け。
ビルドマニュアルだと、取り付け前に Pro Micro とピンヘッダをはんだ付けしていますが、私は Helix に設置してからはんだ付けしました。お好みでどうぞ。
OLEDモジュール
これも特に難しいことはないので省略。
Underglow 用LED
取り付けていないので分かりません、ごめんなさい。ビルドマニュアル参照。
動作確認
ビルドマニュアルではキースイッチを取り付け終わってから動作確認をしていますが、バックライトLEDを取り付けた場合はこの時点でLEDだけの動作確認をしてもいいと思います。
お使いのPCのOSによって書き込み方が変わりますが、最も環境依存が少ない(はず)の qmk_firmware
を使ってコマンドラインからビルドします。
ファームウェア書き込みガイドのこの辺 に非常に丁寧にやりかたが書いてあるので、この手順通りにやれば問題ないはず。
Linux 環境はほぼ Mac環境でのやり方と同じはずです。 brew
がないので各ディストリのパッケージマネージャで置き換える必要はありますが。
私のレツプリビルドログの真ん中あたりで Ubuntu での例を掲載しているので、 Linux 環境の方はこちらもどうぞ。
ファームウェアの書き込み時、リセットスイッチを押す必要があります。コマンドライン上にちゃんと指示が出ますが、念の為。
この時点で LED が点灯しない場合は LED の接触不良、高温によるLEDの破損などが考えられるので、原因を特定、修理する必要があります。
LED のトラブルは Helix 最大の難所と言っても過言ではない気がします。 @mtei さんの以下のツイートなどを参考にして頑張って修理しましょう。
#Helix祭り
— m.tei / ishii (@mtei) 2018年3月4日
Helix のバックライトLED(SK6812mini)が点灯しない時
チェックポイント1:電源の確認
HelixをUSB未接続(つまり電源OFF状態)にして、テスターなどでボードのVccとGNDがLEDの該当端子につながっていることを確認する。 pic.twitter.com/wmzcyFkvWZ
キースイッチ
ようやくキースイッチの出番です。一気にキーボードらしさが出てきました。
アクリルプレート(もしくはステンレスプレート)を使うので、アクリルプレートの保護シート?(茶色いの)を剥がしておきます。
格子状のアクリルプレートを基板に重ね合わせ、その上からスイッチをはめ込んでいくのが基本手順です、が、キースイッチの種類によって若干やり方が変わります。
ロープロファイルでないキースイッチ、かつプレートマウント方式のキースイッチを使用する場合は、先にアクリルプレートにスイッチを全部はめ込み、その後基板と重ね合わせる手順のほうが楽なようです。
その際、キースイッチとアクリルプレートの間に隙間が出来ないように注意しながらはめ込み、及び重ね合わせをするように注意しましょう。
PCBマウント方式のスイッチだと…どうなるんだろう、基板とアクリルプレートを重ねてからスイッチ設置で良いんだろうか。
両者の違いについてのまとめ Togetter を読んだもののいまいちピンとこなかったので、有識者の意見が待たれるところです。
スイッチをはめ込んだらはんだ付けしていきます。特に複雑なことはないのですが、マニュアルにあるとおり「隣のパッドにブリッジしないよう」に気をつけてください。
スイッチを全て取り付けたら、ちゃんと全てのキーが入力可能であることを確認します。
最終組み上げ
ここまで来たらあとはアクリルプレート、スペーサを取り付けてネジ止めをし、ゴム足を取り付けたら完成です。お疲れ様でした。もう片手分も頑張って作りましょう。
雑感など
- ビルドマニュアルが丁寧で分かりやすかったので、スムーズに組み立てを行えた印象。
- 表面実装、ダイオードはいくつか付けて慣れてしまえば特に辛いものではなかった気がする。
- とはいえリード部品も使えるので、やはり初心者はそちらを選んだほうが無難な気がする。
- LEDが穴に嵌りすぎる問題が一番つらかった。ベータテスターさんは特にそんな苦労をした記憶がないとかなんとか
- 個体差なんだろうか…?
- LEDが点灯しない問題に遭遇した時のトラブルシュートがなかなか難しい。全部点かない、特定の場所以降が点かない、何かの拍子に生き返る/死ぬ、など。
- 最小限(LED無し)で作成する場合の難度はレツプリより簡単かもしれない?
- ロープロ仕様でなくても十分薄い。シュッとして見える。レツプリが野暮ったく見えてしまう…
- とはいえロープロ仕様の薄さに対する憧れは捨てきれず。3台目用のパーツを手配しなきゃいけない可能性…?
- はっきりした理由は不明だが、レツプリよりもなぜか打ちやすい。スイッチが違うので Helix の優位性かどうかは不明。
- スイッチ由来のものとは違う打ちやすさのように思えるがしかし…?
- OLEDカバーのアクリル板が微妙に内側にズレてキーキャップの下に潜り込むことがある
- 大した問題ではないけど
- Helix はいいぞ
写真集
ビルドログ用にいろいろ写真を撮影したのですが、全然本文中に挿し込む余地がなかったのでここにまとめておきます。